【初動】開業初月から利用者を確保する営業戦略|相談支援事業所・ケアマネとの連携

勝目麻希

「開業日が迫っているが、利用者が集まるか不安に感じている」「地域の相談支援事業所に対してどう営業すればいいかわからない」と悩んでいませんか?

障害福祉サービスの開業直前は、さまざまな準備に追われて集客まで手が回らないことも少なくありません。 

結論として、障害福祉サービスの集客はチラシの配布などより、地域の「計画相談員」との関係構築が大切といえます。オープン2〜3ヶ月前から戦略的なBtoB営業を行い、財務的アプローチで損益分岐点を見据えることが、早期に事業を軌道に乗せるための必須の条件となります。

この記事を読めば、障害福祉サービスにおいて最も確実な「BtoB集客(相談員への営業)」の具体策がわかります。

もくじ
  1. 障害福祉事業の集客は「計画相談員」へのBtoB営業が鍵
  2. 相談支援事業所への実践的なアプローチ手順
  3. 送客の不安を払拭する「内覧会」と「最低限のWeb準備」
  4. 【財務戦略】集客期間を乗り切る資金繰りと目標設定
  5. まとめ

障害福祉事業の集客は「計画相談員」へのBtoB営業が鍵

障害福祉事業において、利用者を安定的に獲得するための鍵はどこにあるのでしょうか。

それは、一般の利用者への直接的な宣伝ではなく、地域の相談員へ向けたアプローチにあります。

利用者は自分で施設を選べない?計画相談員(相談支援専門員)が実質的なキーマンとなる仕組みを理解しましょう

障害福祉サービスは、エンドユーザーである利用者に直接アピールするのではなく、計画相談員が紹介の決定権を持っている仕組みを理解することが重要です。

なぜなら、障害福祉サービスを利用するためには、相談員が作成する「サービス等利用計画」が必須となるためです。 

たとえば、利用者が市町村の窓口へサービス利用の申請に行くと、まずは指定特定相談支援事業者などで計画相談支援を受けるように案内されます。

ここで相談員は、利用者の自立した生活を支え、適切なサービス利用に向けてケアマネジメントを行います。

つまり、相談員自身が「利用者の課題を解決できる、紹介したい事業所リスト」を持っており、そのリストに入ることが集客の第一歩となるのです。

参照:厚生労働省|計画相談支援の仕組み

初月から利用者を獲得するには、指定申請と並行して「オープン予定の2〜3ヶ月前」から営業を開始すべきです

営業活動はオープンしてから動き出すのでは遅く、2〜3ヶ月前から始めることが集客を成功させるカギとなります。 

その理由は、相談員と利用者の面談、施設の見学、そして実際の契約までに、多くのタイムラグが発生するからです。 

たとえば、オープン直前に「明日から利用できる事業所ができました」と案内しても、相談員はすでに数ヶ月先までの支援計画を組んでいることがほとんどです。

そのため、指定申請の手続きを進めるのと並行して地域の相談支援事業所へ挨拶に行き、事前に情報を伝えておく必要があります。

逆算してスケジュールを組むことが、初月から利用者を獲得するためには欠かせません。

相談支援事業所への実践的なアプローチ手順

相談員がキーマンであるとわかっても、ただ挨拶に行くだけでは紹介にはつながりません。

ここでは、現場で実際に効果が出る具体的な営業ノウハウをお伝えします。

「相談員の困難ケースの受け皿」になれることを説明し、信頼を獲得しましょう

営業のスタンスを、「利用者を紹介してください」というお願いから、「行き場のない利用者はいませんか?」と課題解決を提案する方向へ切り替えます。 

相談員は日々、多くの利用者の支援計画作成やサービス調整に追われており、単なる事業所の売り込みよりも「自分が抱える課題を一緒に解決してくれる存在か」を重視しているからです。

たとえば、重度の障害を持つ方や、他の施設で断られてしまった困難なケースについて、「当施設であればこのようなサポートが可能です」と提案します。

相手の悩みに寄り添い、受け皿になれることを示すことで、相談員にとって非常に頼りになる存在として信頼を獲得できるのです。

医療的ケアの可否や受け入れ可能な障害特性を明確にした「プロフィールシート」を持参すると効果的です

営業の際は、事業所の理念だけでなく、具体的なスペックを記載したプロフィールシートを持参することが有効です。 

相談員が事業所選びで本当に知りたいのは、抽象的な言葉ではなく、「目の前の利用者が安全に通えるか」という実務的な情報だからです。 

たとえば、「車椅子での入室やトイレの利用は可能か」「送迎の対応エリアはどの範囲までか」「医療的ケアはどの程度まで対応できるか」などを一枚の紙にまとめます。

これにより、相談員は手元の利用者リストと照らし合わせ、紹介可能かどうかを即座に判断できるようになります。

介護保険のケアマネジャーへは、「障害者の65歳問題」に対応できる体制をアピールして連携を図ります

障害福祉の相談員だけでなく、介護保険を担当するケアマネジャーにもアプローチを行い、連携の構築を目指します。 

高齢化に伴い、介護保険制度のサービスを利用する場合、特定の障害福祉サービスの場合を除き、原則として介護保険サービスが優先されるというルールがあるためです。 

たとえば、「障害者の65歳問題」として、65歳を迎えた利用者が介護保険サービスへ移行する際、スムーズな連携が求められるケースが増えています。

この点にしっかりと対応できる体制があることをアピールすることで、ケアマネジャーからの信頼を得て、新たな相談窓口としてのポジションを確立することにつながります。

参照:厚生労働省|介護保険と障害福祉の適用関係

送客の不安を払拭する「内覧会」と「最低限のWeb準備」

相談員に興味を持ってもらえた後は、実際に利用者を紹介してもらうための安心感を提供する必要があります。

ここでは、紹介の最後の一押しとなる準備について解説します。

オープン前の「関係者向け内覧会」を実施し、相談員が抱える「紹介リスク」をなくします

開業前に相談員や関係者を招いた内覧会を開催し、事業所の設備を直接見てもらうことが非常に大切です。 

相談員は、自分が紹介した施設で利用者が事故やトラブルに巻き込まれることを何よりも恐れており、紹介に対する心理的なハードル(リスク)を抱えているからです。 

たとえば、現地に足を運んでもらい、スプリンクラーなどの防災設備がしっかりと整っているか、車椅子でも移動しやすい動線が確保されているかを一緒に確認してもらいます。

実際に目で見て安全性が伝わることで、相談員は自信を持って利用者を送り出せるようになります。

相談員は紹介前に必ずホームページを見るため、最新の空き状況やスタッフの保有資格を常に明記しておきましょう

オープン前には事業所のホームページを開設し、最低限の必須項目を整えておきましょう。多額の制作費をかけて、派手なWeb集客に深入りする必要はありません。

相談支援専門員は、利用者に事業所を提案する際、事前に必ずホームページを確認します。

ここでホームページに求められるのは、BtoB営業における「名刺代わりのカタログ」としての役割です。 

そのため、「現在の空き状況」「配置スタッフの保有資格」「施設内の雰囲気がわかる写真」といった実務的なデータを、常に最新の状態で明記しておくことが欠かせません。

知りたい情報がWeb上で瞬時に把握できる状態を作っておくことは、多忙な相談員の「電話で確認する情報収集の手間」を省くことになり、結果として紹介のハードルを大きく下げることに直結します。

【財務戦略】集客期間を乗り切る資金繰りと目標設定

ここまでは集客の手法をお伝えしましたが、事業を存続させるためにはお金の戦略が不可欠です。

集客期間を乗り切るための財務的なアプローチを解説します。

財務戦略(特に資金繰り)が大切であることを忘れないでください。

開業当初の赤字を想定し、創業融資等で「最低6ヶ月分の運転資金」を確保しておくべきだから

開業直後の数ヶ月間は赤字になることをあらかじめ想定し、十分な運転資金を用意しておくことが経営を安定させます。 

営業活動が実を結んで利用者が増え始めたとしても、国保連(国民健康保険団体連合会)から初回の報酬が入金されるまでには数ヶ月のタイムラグが発生するからです。 

たとえば、日本政策金融公庫の「ソーシャルビジネス支援資金」などを活用し、事業を行うために必要な設備資金や運転資金を準備しておくことが考えられます。

この融資制度などを利用して、入金のない期間を乗り切るための「最低6ヶ月分の運転資金」を確保しておけば、資金ショートの不安なく営業活動に専念できます。

参照:日本政策金融公庫|ソーシャルビジネス支援資金

「TKC社会福祉法人経営指標」等を参考に損益分岐点(目標稼働率)を算出し、営業のゴールを明確にする

「〇人集まれば単月の赤字が止まる」という明確な財務目標(損益分岐点)を持って営業活動に取り組みましょう。 

目標がないまま「とにかく多く集客する」という姿勢では、経営の軸がブレやすくなり、適切な事業運営が難しくなるためです。 

たとえば、施設の経営状況を実態に即して適切に反映した「TKC社会福祉法人経営指標(S-BAST)」を参考にすることが有効です。

なお、S-BASTは一般公開されているものではなく、TKC会員事務所が参照できるデータになります。

日々の取引に基づく現場の数字を加工せずに集計したこの指標を活用し、自社の目標稼働率を算出します。

単月黒字化へのゴールを明確に数字で把握することが、ブレない営業活動を続けるための原動力となります。

まとめ

障害福祉の集客は、地域のハブとなる計画相談員やケアマネジャーに一番に思い出してもらう事業所になるかの勝負です。 

単なる理念の共有にとどまらず、相手の課題を解決する具体的な受け入れスペックを提示すること。

そして、内覧会やホームページを通じて安心感を担保することが、確実な紹介に直結します。 

これらをオープン前から計画的に実行し、十分な資金繰りと明確な目標を持つことで、開業初月からの早期黒字化を目指していきましょう。

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最後までお読みいただきありがとうございます。 記事では一般的な正解はお伝えしましたが、税務や経営の最適解は、売上規模、業種、そして経営者様が描くビジョンによって千差万別です。

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この記事の執筆者
勝目麻希
勝目麻希
ライター
新卒でメガバンクに総合職として入行し、中小企業〜大企業向けの融資や金融商品の販売などを経験。その後、転職・結婚・出産を経て、2018年4月よりフリーランスのライターとして活動開始。

記事の監修

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税理士法人 八木会計
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相模原市・橋本駅近くの[税理士法人 八木会計]です。
地域密着のパートナーとして、相模原市内外の医療機関・福祉施設の経営を専門的にサポート

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「社会福祉簿記上級」保持者が多数在籍しており、複雑な会計実務から指導監査対策まで、相模原の地域福祉を支える法人様を万全の体制でバックアップします。

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