【医療機器】医療機器のリース vs 購入判断
「医療機器をリースにすべきか、購入すべきか」クリニックの開業準備を進めるなかで、多くの医師が悩むポイントです。
金額が大きいだけに、選択を誤ると開業直後の資金繰りに直結します。
開業直後は患者数も少なく、保険診療の収入が実際に入金されるのは数ヶ月先になるため、手元資金が想定以上に薄くなるケースも珍しくありません。
本記事では、リース・購入それぞれが資金繰りに与える影響をキャッシュフローシミュレーションで比較しながら、自院に合った調達方法の選び方を解説します。
医療機器の3つの調達方法

医療機器の調達方法には、購入・リース・レンタルの3つがあります。
それぞれの仕組みを正しく理解したうえで、自院に合った選択を検討しましょう。
購入
自己資金や融資で機器を取得し、自院の資産として保有する方法です。 所有権があるため、使用や売却を自由に行えます。
新品だけでなく中古を選ぶこともでき、機種によっては導入コストを抑えられるメリットがありますが、中古機器はメーカー保守に加入できない、修理対応に制限があるといったケースもあるため、事前の確認が必要です。
また、医療機器の区分によっては、薬機法に基づき適切な許可を持つ事業者から購入する必要があります。
リース
開業医が選定した医療機器をリース会社が購入し、クリニックが月額料金を支払いながら使用する契約形態です。
所有権はリース会社にあり、契約期間は法定耐用年数をもとに設定され、医療機器では5〜7年程度になるケースが多く見られます。
リースには主に以下の種類があります。
機器の購入代金・金利・固定資産税・保険料などをリース期間中に均等払いする形式です。
中途解約は原則不可で、違約金が発生します。個人事業主の場合、リース料は支払時に賃借料として費用計上するのが一般的です。
機器の使用に対して対価を支払う形式で、契約条件の自由度が比較的高い特徴があります。
ただし医療機器のリースではファイナンスリースが一般的です。
リース料の計算には「リース料率」が使われます。
例えば機器価格600万円・料率1.80%であれば月額10.8万円、5年間の総支払額は648万円となります(参考値。契約条件により変動)。
なお、リースは一律ではなく、満了後に買い取る前提のものや、残価を設定して月額を抑えるもの、支払い開始時期を調整できるものなど、条件に応じて複数の設計があります。
これらの条件の違いによって費用として計上できる時期や方法が変わり、結果として所得計算や税金の金額にも影響が生じることがあります。
そのため、リース契約を締結する際には契約内容を十分に確認し、税務上どのような取扱いになるかを事前に把握しておくことが大切です。
レンタル
1日〜数週間単位で機器を短期借用する方法です。
医療機器業者やレンタル会社の在庫から選ぶため機種の選択肢が限られますが、費用にはメンテナンス・設置・撤去が含まれる場合が多いです。
開業時の主要な調達手段にはなりにくく、リース期間満了後に同じ機器を再リースするか、最新モデルに切り替えるか迷っている場合など、補完的な場面での活用に適しています。
医療機器の調達方法別 メリットとデメリット

調達方法によって、開業後の資金繰りは大きく変わります。それぞれのメリット・デメリットを確認します。
リースのメリット・デメリット
- 開業時の資金流出を抑えられ、手元資金を厚く保った状態でスタートできる
- 担保不要で手続きが比較的簡素なため、開業融資の手続きと並行して進めやすい
- 固定資産税の申告・納付や動産保険の手続きはリース会社が担うため、事務負担が軽減される
- 契約期間終了後に最新機器へ切り替えやすく、技術革新への対応がしやすい
- 総支払額は購入より高くなる(リース料に利益・固定資産税・保険料等が含まれる)
- 原則として中途解約はできず、解約時は残リース料相当の違約金が発生する
- 診療方針の変更や機器の陳腐化が早まっても、契約期間中は支払い義務が続く
- 機器のカスタマイズや仕様変更ができない
開業初期の資金繰りを安定させやすい一方、契約期間の制約や総支払額が、購入より高くなる可能性がある点には注意が必要です。
購入のメリット・デメリット
- 所有権が自院に帰属するため、カスタマイズや売却が自由
- 長期使用の機器はリースより総支払額を抑えやすい
- 条件を満たす場合、税制優遇(医療用機器等の特別償却など)を受けられるケースがある
- 開業時に多額の資金が一括流出し、運転資金が不足するリスクがある
- 機器更新時に廃棄コストや手続きが発生する
- 減価償却の計算や固定資産税の申告など、会計処理の手間が増える
開業時の資金流出が大きく、収入が安定するまでの期間に手元資金が薄くなるリスクがあります。
レンタルのメリット・デメリット
- 初期費用がほぼかからない
- メンテナンス・設置・撤去費用が料金に含まれている
- 短期利用やリース期間満了後の移行期間に適している
- 長期利用ではコストが割高になるため、開業時の主力調達手段には向かない
- 機種の選択肢が限られる
短期利用に限れば資金繰りへの影響は限定的ですが、開業時の主要な調達手段としては現実的ではありません。
クリニック開業で導入する医療機器 リース・購入比較

次は医療機器ごとにどちらが向いているかを見ていきます。
ただし、あくまで傾向であり、クリニックの規模・診療方針・資金状況によって判断は異なります。
リースに向いている医療機器の特徴と具体例
数年で新モデルが登場するような機器は、購入しても短期間で買い替えが必要になる可能性があります。
リース契約であれば、期間終了後に最新モデルへ切り替えやすく、常に質の高い医療を提供できます。
具体例としては以下の機器が該当する傾向があります。
- 電子カルテ・レセコン(クラウド利用やリースなど、月額型の導入が多い)
- 超音波診断装置(画像技術の進歩が速い)
- 内視鏡システム(モデルチェンジが多い)
- CT・MRI(高額なため、リースや割賦などを組み合わせた調達が検討されるケースが多い)
また、高額なため購入すると開業融資の借入総額が大きく膨らむ機器も、リースを活用することで資金計画上の負担を抑えられる場合があります。
購入に向いている医療機器の特徴と具体例
購入に向いているのは、長期間使用が見込まれる機器です。
具体例としては以下の機器が該当する傾向があります。
- 診察台・ベッド
- レントゲン装置
- 滅菌器・オートクレーブ
- 処置用チェア・診察用照明
診療科目別の考え方
診療科目によって必要な機器が異なるため、リースと購入のどちらが向いているかも変わってきます。
内科・消化器内科・循環器内科
超音波診断装置や内視鏡システムなど画像診断系機器は、技術革新のサイクルが速く数年ごとに新モデルが登場するため、リースで常に新しい機器を使える環境を整えやすいです。
診察台やベッドは技術的な陳腐化が起こりにくく、毎日使うため、購入して長期間使い続けるほうがコストを抑えられる場合が多いです。
整形外科・リハビリテーション科
X線撮影装置やけん引装置は機器本体が高額なうえ、定期保守にも費用がかかります。
保守込みプランのリース契約にまとめることで、維持管理の手間とコストを平準化できる傾向があります。
超音波治療器や診察用ベッドは使用頻度が高く、長期間安定して使えるため、購入して減価償却していくほうが総コストを抑えやすいです。
皮膚科・美容皮膚科
医療レーザー機器は新モデルの登場サイクルが比較的速く、旧型機器では集患競争で不利になりやすいため、リースで機器を入れ替えやすい状態にしておくことが有効です。
滅菌器は技術的に成熟しており、モデルチェンジが少なく長期使用に向いているため、新品購入が選ばれるケースが多いです。
ただし診療科目や規模によって状況は異なるため、あくまで参考としてください。
医療機器のリース・購入キャッシュフロー比較シミュレーション

リースと購入では、開業後の資金残高にどれほどの差が生まれるのでしょうか。
取得価格600万円の医療機器を想定した一例として、具体的な数字でキャッシュフローを比較します。
- 機器価格:600万円
- 使用年数:6年
- リース契約期間:5年
- 手元資金:1,000万円(実際の自己資金は診療科や開業規模により異なる)
- リース料率:1.80%(契約条件により変動)
- 月額リース料:10.8万円
- リース総支払額:648万円(10.8万円×60回)
- リース期間終了後は、再リース・再契約・機器更新などの対応が必要
リースと購入、どちらが有利か
以下は医療機器の調達コストのみを比較したシミュレーションであり、実際の資金残高は診療収入や人件費・家賃などの支出によって変動します。
| 時点 | 購入(手元資金残高) | リース(手元資金残高) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 開業時 | 400万円 | 1,000万円 | +600万円 |
| 1年後 | 400万円 | 870万円 | +470万円 |
| 2年後 | 400万円 | 741万円 | +341万円 |
| 3年後 | 400万円 | 611万円 | +211万円 |
| 4年後 | 400万円 | 482万円 | +82万円 |
| 5年後 | 400万円 | 352万円 | −48万円(逆転) |
このシミュレーションから、以下の2点が確認できます。
- 開業から4年間は、リースのほうが手元資金を厚く保てる
- 5年時点で総支払額が逆転し、購入のほうが約48万円低くなる
どちらを選ぶかで、開業後の資金繰りは大きく変わります。
それぞれがキャッシュフローに与える具体的な影響を確認しておきましょう。
- 開業時に600万円が一括流出し、手元資金400万円でスタート
- 400万円はスタッフ数名分の給与・家賃数ヶ月分に相当するタイトな水準
- 保守費・固定資産税・動産保険料は別途発生
- 開業時の資金流出を抑えられ、手元資金1,000万円でスタートできる
- 月額10.8万円・年間約130万円の固定費が継続発生
- 売上が計画を下回った場合、資金繰りを圧迫するリスクがある
なお、リース料には固定資産税・動産保険料が含まれているため、実質的なコスト差は48万円より縮まる可能性があります。
手元資金を守るか、総コストを抑えるか。自院の資金状況と診療方針で判断が分かれます。
医療機器の調達方法における会計・税務上の扱い

医療機器の調達方法は、会計処理や税負担にも影響します。それぞれの扱いを確認します。
| 項目 | 購入 | リース | レンタル |
| 初期資金負担 | 大きい | 抑えられる | ほぼなし |
| 月々の費用 | 保守費等のみ | リース料(固定) | レンタル料 |
| 会計処理 | 減価償却・固定資産税等が発生 | 支払時に賃借料として費用計上(個人事業主の場合) | 全額費用計上(経費) |
| 税制優遇 | 条件により適用可 | 原則として適用対象外 | 適用対象外 |
| 機器更新のしやすさ | 手間・費用あり | 契約終了後に対応 | 最も容易 |
なお、購入の場合、条件を満たす医療機器には、医療用機器等に係る特別償却(取得価額の12%)が適用できるケースがあります。
適用期限は令和9年3月31日まで延長されていますが、対象機器は随時見直されるため、導入前の確認が必要です。
主な条件は以下の通りです。
- 青色申告を行っていること
- 取得価額500万円以上
- 厚生労働省告示で定める対象品目であること
- 購入のみ適用(リースは所有権がないため対象外)
医療機器のリース・購入を判断するチェックポイント

最後に、開業医が実際に判断する際の実務的なチェックポイントを整理します。
診療方針と機器の優先順位を決める
すべての機器を均一に揃える必要はありません。
診療の中核となる主力機器は信頼性を重視した調達を優先し、補助的な機器は中古やリースでコストを抑えるのが現実的です。
診療スタイルによっては、専門的な検査は近隣医療機関と連携し、自院の設備を絞るという選択肢もあります。
機器の収益性とコスト回収を確認する
医療機器には、それ自体が診療報酬を生む機器と、そうでない機器があります。
例えば、CTやMRIのように直接収益が発生する機器は、月額コストと月間検査件数から損益分岐点を試算できるため、導入前に事業計画として確認しておくことをおすすめします。
一方、電子カルテや画像サーバーはそれ自体では点数を生まないため、月額負担として許容できる範囲かどうかで判断します。
手元資金・融資枠から逆算して調達計画を立てる
手元資金と融資枠を確認したうえで、無理のない調達計画を立てることが重要です。
リースは形式上借入とは異なりますが、金融機関の審査では実質的な債務として評価されることがあるため、融資計画との兼ね合いも事前に把握しておきましょう。
契約前にコスト・保守体制を確認する
リース契約では、消耗品コストや保守・修理費用が含まれているかどうかを必ず確認します。
含まれていない場合、実質的な月額負担はリース料より高くなります。購入の場合は廃棄時のコストと手続きも見込んでおきましょう。
まとめ:医療機器の導入方法の選び方

医療機器を導入する方法には、購入・リース・レンタルといった選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
機器の価格や使用予定期間、資金計画によって適した方法は異なるため、導入前に特徴を理解しておくことが重要です。
また、契約内容によって費用計上の方法や税務上の取扱いが変わる場合もあります。
設備投資を検討する際は、資金面や税務面も含めて総合的に判断することが必要になりますので、開業前に税理士に相談することをおすすめします。
こちらの記事でも、それぞれを詳しく解説しています。

